第6話


(こんな時こそ、キャプテンのなっちがなんとかしないと)

安倍は、石川のかわりとばかりに果敢に動き回りボールを追いかけた。

「そう簡単には、わたさない」
相手もさらに小刻みなパスを繋ごうとする。

「それ」

バシ

相手DFがパスを出した時、安倍の後ろに隠れていた後藤が見事にパスカット。

「一気に行く」
後藤は安倍に繋がず、ドリブルにはいった。

(相手のプレスが強いなら、一人でドリブルで持ち込むのが一番だからね。)

後藤は勢いに乗って一気にかわしていく。

「くらえ」
相手が反則覚悟で体で止めに入った。

「うっ」
後藤は両サイドから足を掛けられ体勢をくずす。

(ここでプレイを止めてはなんの意味もなくなちゃう)

「それっ」
後藤は潰されながらも安倍にパスを出す。

バウッ
ボールはぴたっと安倍の足元にコントロールされている。

「よし、いくぞ。今度はなっちのドリブルだべさ」
「まずい、今度はそいつも潰すんだ」
ミカがイレブンに指示をだす。

「よし、頼んだよ。梨華ちゃん」
安倍はDFを十分引きつけて石川にパスをだした。

「なにぃ」
「ナイスパスです、安倍さん」
「よし。一気にいくぞ」
「頼んだよ、梨華ちゃん」
「はい、安倍さん」

石川の前には、キーパーのアヤカとミカしかいない。

(くるならこい。かえりうちにしてやるわ)

(絶対抜く。さっきの借りは返す)

石川は一気に加速し、ミカに詰める。
そして一気に横に飛び、鮮やかなステップで抜き去った。

「よし、梨華ちゃん。うまい」

(やった。抜いた)

「梨華ちゃん、前」
「えっ」

目の前にはアヤカがペナルティーエリアを飛び出し、反則覚悟のタックルに来ていた。

ガキィッ  ピィッ
審判の笛がなり、アヤカに向け、イエローカードをかざす。

(しまった。抜いたことに気を許し、アヤカさんの飛び出しに気付かなかった。
 この辺が、トップチームに上げてもらえない理由かなぁ)

「すみませんでした。ミカさんを抜いた時にすぐシュート打っていれば1点取れたのに」
「ドンマイ、ドンマイ、梨華ちゃん。
 まだ、得点チャンスを潰したわけじゃないべさ。絶好の位置でのフリーキックだしね」

(くそ、あんなひよっこに抜かれた。でも、ここは絶対きめさせない)

「よし、みんなこのピンチは守りとおす」
「おう」

イングランドは、ミカの指示でゴール前に壁をつくる。
「アヤカ、日本は必ず安倍でくる。代表試合では99%安倍が蹴っている。
 成功率も1番だしね。安倍だけに集中して。それ以外は私が直接止めるわ。」
「OK.ミカ」

「必ず決めて見せるから私に蹴らせてくれませんか」
「「「「えっ、梨華ちゃん・・・」」」」
「うん」

日本は、石川がボールをセットし、キックの位置に立つ。
その後方には、近いサイドから後藤、吉澤、加護、安倍が立つ。

(石川が蹴りだし、安倍以外のやつで、くるっていうのか。その時は私が)

ピィイイ

「よし、いけぇ」
笛が鳴ると、石川はゴールに背を向けたまま、横に大きく蹴り出した。
「なにぃ」
しかし、ボールは見事な大きな弧を描き、壁の横を通りゴールに突き刺さった。

「やったぁ、梨華ちゃん」
「よし、決まった。日本には石川梨華がいることも忘れないでね。」

前半30分、日本同点に追い付く。


「みんな、ねちねちしたサッカーは終わりよ。勝ちに行くわ。攻めまくるわよ」
「おう」
ミカがイレブンに指示をだす。

ピィイイ

イングランドのボールで試合再開。

イングランドは、すばやいいパス回しで攻めあがる。

「なにぃ」
「同点に追い付かれて作戦変更?」
麻美たち日本DF陣は完全に意表をつかれた形となった。

「それ、ミカ」
オーバーラップしてきていたミカに相手MFがパスをだす。

「いけぇ」
ミカはそのままロングシュートを打った。

「でや〜」
高橋がすばやく反応しパンチングでふせぐ。

「はじかれたボールを拾え。攻撃をきるな」
ミカが声をあげる。

「よし、みんな気を引き締めていくべさ。ここからが本当の勝負だよ」
「「「「おう!!」」」」

日本陣地内でボールの奪い合いが続く。

「でや」
紺野がなんとかタッチラインにクリアした。

すると、ここでイングランドベンチが動いた。
交代の番号カードをかざした。




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