第5話


<Chapter.2-2 死の足音>

――――天恩街南部

AM0:40

「よし、ようやく片付いたみたいだね。」

「はあああ…あいつら雑魚でしたけど数だけはいましたね。」

うんざりしたように吉澤が言った。そこら中に敵の残骸が山積みにされている。

「他のところはどうかな?よっすぃ、東を見てきてくんない?オイラは西にいくから。」

「あ、はい、了解っす。」

「それじゃ―――」

矢口が走り出そうとしたとき、隠密が突然現れた。

「隊長各位に伝令!!六番隊隊長・小川麻琴殿がお亡くなりになりました。」

「アァ!?なに言ってんだ!!小川が死んだって―――」

「よっすぃ、落ち着けって!どういうこと?」

「詳細は――――――――――」




「伝達事項は以上です!!」

「そんな……」

「よっすぃ、急ごう。他のみんなが心配だよ。」



――――天恩街西部

AM1:07

「はぁ、はぁ。ののぉー!!どこいったんやー?」

加護がおろおろと辺りを行ったり来たりしていた。彼女は意外と冷静にものを見るタイプなので
このようなことは珍しい。そこに矢口が到着した。


「加護!こっちも終わったの?」

「あ、矢口さぁーん!大変なんです…。
 ののが…ののがいなくなったんです。」

「えぇ!?」

「数が多かったんで分かれて戦ってたら…いつのまにか……」

「…まぁ、辻に限ってあんなやつらにやられるとは思えないけど…」

「ののになんかあったら…うち…うち……」

「大丈夫…きっと、大丈夫だから…とりあえず戻ろう。」


すると例によって隠密がどこからともなく現れる。

「隊長各位に伝令!!」

「ああ…オイラはもう知ってるからいいよ。加護にはオイラから―――」

「は、しかし…」

「いいから帰れっつってんのよ!!」

「………失礼します!!」


「矢口さん…?」

いつもと様子の違う矢口になにかが起こっていると感じ取ることができた。

「加護……実は―――――」



――――東門

AM1:12



「村田さん!!村田さんっ!!」


吉澤は一旦東の迎撃ポイントにいったが、もうすでに藤本と紺野はいなく、
そこには敵の残骸だけが残っていた。おそらく帰還したのだろうと思い、
自分も帰ろうと東門にきた。そこで目にしたのは、門を守護する
間違いない実力者のなれの果てであった。短時間のうちに何人もの
犠牲者がでた。これが戦争というものなのかと改めて実感していた。


「くそっ…いったいどうなってんだよ……。
 急いで戻らなきゃ……。」



――――護廷十番部隊会議室

AM2:00


頃合を見計らって、飯田は隊長を集めた。
どんなに悲しくても、隊長たちを統べるものの務めとして
気丈に振舞わなければならないのがつらかった。
いまほど総長という立場を恨めしく思ったことはない。



「これまでにわかっている事実を説明するわ…」

飯田の顔色はすぐれない。

「六番隊長の小川が亡くなったというのはみんなきいたわね…?」

みな、顔を下に向けている。
高橋にいたっては涙を流していた。

「まこっちゃん…」

――――――お誕生日会、楽しみにしてるね。―――――

(あのとき…まこっちゃんの様子がおかしかった。もしかしたら
 なにか知ってたんじゃ……)

「ほかにも被害がでてるの……」

ふう、と飯田は力なくため息をついた。

「十番隊長の新垣、門番四神の村田さんも亡くなったわ…
 それから一番隊長の辻が行方不明……」

「ッ………………!?」

その場にいた誰もが動揺をみせた。全員参加が原則の隊首会。
おかしいとは思っていた。

ひときわショックの大きかったのは高橋だった。一番の親友たちが
この短時間でいなくなってしまった。


「辻には捜索隊をだした。無事だといいんだけど…。
 亡くなった三名については殺害方法はすべて同じ。
 霊源点を破壊された後、心臓を貫かれている…」

「同一犯……?」

「断定はできないわ。」

「「「「………」」」」
 
「それで気になったことがあるから、詳しくは石川に話してもらうわ。石川…」

「はい…。3名の遺体には…直接の死因となった胸と霊源点以外には外傷はありませんでした。
 争ったというあとがまったく見られません。
 可能性としては、殺害犯は圧倒的な力を持つ人物。もしくは……」

石川の顔が曇った。

「油断を与えることができる顔見知りの可能性も…」

「侵入者が顔見知り……?」

「あくまでも可能性の話をしているだけよ。それで私たちの中に
 疑心が生まれれば、かえって敵の思う壺かもしれないし…」



「飯田さん、ちょっといいですか?藤本さんと紺野…あんたたち敵を迎撃したあとどこにいったの?」

「…敵を殲滅してから帰還したわ。」

「村田さんを見つけたのはあたしだよ。どこから帰還したんだよ?
 倒れてる人を見てみぬふりしたわけじゃないだろ?」

「つっかかってくるわね…私たちを疑ってるわけ?村田さんを殺したって。」

「そうとってくれて構わないわ。」

「吉澤、あまり興奮しないで。さっき言ったばかりじゃない。
 疑いだしたらきりがないわよ?
 でもあなたたちの行動には疑問点があるわね。藤本、紺野、
 やましいことがないなら答えて――――」



ビー、ビー、ビー、ビー!!
突然、警報が鳴り響いた。

〈天中街南部・兵器庫周辺にて侵入者発見の報告。直ちに警戒にあたれ。
 繰り返す――――――――〉


 
「しょうがないわ。隊首会は一旦中止。加護、高橋、吉澤、いって!!」

「「「了解しました!!」」」 

「飯田さん…わたしも前線で戦います…」

「石川……わかったわ。でもあなたの本分は救護だということを忘れないで。
 これ以上仲間を失いたくないの…」

「はい……」

「藤本、紺野はわたしと矢口と一緒に行動してもらうわ。文句は言わせないわよ?」

「「……了解。」」



――――天上宮・地下研究所


精巧に人間のかたちをしてはいるがその顔からは生気が見られず、
明らかに人間ではないことが見て取れる3つの機械の塊
――いや、もとは人間だったのだが――それらをみながらつんくが言った。

「お前らはほんまによう働いてくれてんで。さすがは改良に改良を重ねただけはある。くくく。
 それに石黒博士、福田。お前らもご苦労やったなぁ。
 コマはそろった。あいつらもそうとう疑心暗鬼を生じてるようやし、あとは高みの見物といこか。
 計画達成まで、もう秒読み段階や…はっはあっははあ!!」

「「………………」」




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