第4話


<Chapter.2-1 死の足音>

PM10:28

「くっそ〜、なんなんだよあいつら〜!!」

「アレ…サウスの無人戦闘機・キラービーだよね…
 それに…ウェストの陸上侵略機・バッタ…どうなってんの?」

「この間のバケモンもノースの仕業って噂やし…」

「3つの国が連合して攻撃してきたんれすかね…」


天中街を走る吉澤、矢口、加護、辻。
再び事件が起こった。


「とりあえず辻と加護は西に!!オイラとよっすぃは南にいくよ!!」

「東と北は…?」

「東には藤本と紺野をいかせた。北には…後藤と松浦がいったよ。」

「ソロが動いたんですか?そりゃこれだけの騒ぎなら当然かぁ…」

「気合入れていくでぇ!!」







――――天恩街、北部

PM10:36

「んあ、あたしが寝てる間になにがあったの?」

「なんかぁ、サウスとかウェストが攻めてきたらしいですよぉ」

「へー、そりゃたいへんだねぇ。」

「人事みたいに言わないでくださいよぉ。あ、でも後藤さんの『覇国』があれば
 百人力ですよね。」

「はは、そんな期待されても…それにあいつらが相手なら
 松浦の『千本矢』のほうが頼りになるよ。」

「そんなに誉めないでくださいよぉ。」

「ハハハ…」


神帝つんく直属 後藤真希、松浦亜弥

イーストでなにかがおこったとき、処置をするのはモーニングの仕事である。
故に直属の2人が動いたことはいまだかつてなかった。事態はそれほどまでに
緊迫している。
チームとしてまとまっているわけではないので周りからはソロと呼ばれている。


「ちゃっちゃとおわらせてもう一眠りしよ…」
後藤がぽつりと呟いた。


――――天中街

PM10:25

「それじゃあ、まこっちゃんは南側、理沙ちゃんは東側の見回りね。」

「うん…わかった…」

「あわわわ、わたし大丈夫かなぁ?」

「大丈夫だよ。自信もって。隊長がそんなだとみんなが不安になるよ。」

「う、うん……」


護廷十番部隊・八番隊長 高橋愛、六番隊長 小川麻琴、十番隊長 新垣里沙。
彼女たちもまた同期である。本当はもう一人いるのだが、最近はこの三人で行動することが多い。


「それにしても明日はまこっちゃんの誕生日なのにねぇ。
 はやく安全になればいいね。そしたらさ、お誕生日会やろう。あさ美ちゃんもさそって4人で。」

「うん、そうしよ!!」

「ありがと…2人とも…」


「まっこっちゃん?どした?さっきからなんか変だよ?」

「…う、ううん。なんでもないよ。わたしは大丈夫だから…」

「調子が悪いなら休んでても―――」

「心配しないで。大丈夫…お誕生日会、楽しみにしてるね。」


「それじゃあ2人とも、気をつけてね。」

「はぁ〜…またあとでね。」「……うん…」


――――東門近くの森

PM11:13

中澤、保田、平家の3人は、東門から潜入するために
その近くの森に身を潜めていた。


「どういうわけや?他の国が攻めてきよるとは…」

「でもねぇさん、これは好機やで。あちらさんは混乱してる。」

「そうね。モーニングはほとんど迎撃に向かってるはずだし。警戒はしてても
 中は手薄のはず。」

「そやな。いくならいまか……よし、いくで!!」


――――東門

「裕ちゃん…これって…」

「なんや、どえらいことになってんで。」

「門番四神が殺されるなんて…」

「村田…」


門番四神・東の青龍・村田めぐみ
中澤たちがきたときにはすでに事切れていた。
イースト全土から選び抜かれた門番の死……
それは中澤たちが抱いていた疑念を確信に近づける結果となった。

「やっぱり、つんくのやつ…」

「まて圭坊。憶測で物事を判断するのはよろしくないなぁ。」

「でもねぇさん…」

「ああ……こらぁ、いそがなあかんな…
 もし敵に会って話してわかるようならええけど、だめなようなら…
 わかってるな?」

「大丈夫だよ、裕ちゃん。」

「……なら、いこか。」


――――天中街西部・救護棟倉庫

PM11:34

「うぅ…暗いなぁ…石川隊長もなにもわたしにいわなくてもいいのに…」

ガツッ!!どでっ…
あ、ころんだ。

「いたぁ〜い…」

護廷十番部隊・四番隊所属・道重さゆみは石川に救命道具の補充を命じられていた。
外では戦闘が行われ、警戒レベルが3に設定されているいま、救護班の活躍は必死である。
石川の命令は的確だが、人選には問題があったかもしれない…


―――いや、誰がきても同じでっただろう。悲惨な光景を目の当たりにしてしまうという点で
道重は不運にちがいなかったが…


ピチョン、ピチョン…液体が滴る音がきこえてきた。音の発生源と思われる
倉庫の壁に自然と目がいく。手にした懐中電灯を壁にあてた。


「きゃああああああああ!?」


そこには――――
胸を一突きにされたまま倉庫の壁に刺され、わずかではあるが宙に浮いた状態になっている
小川麻琴の姿があった。目がうっすらと開いているが、まだ血が流れており、
刺されてからまだ間もないことが見てとれた。

10月29日

―――――救護棟本部

AM0:02

ガチャ…

「飯田さん…」

「小川は……?」

ふるふる、と石川は首を横に振った。
飯田は小川の顔にやさしく手を触れた。

「死因は心臓を貫かれての心機能停止…それと…霊源点を破壊されています。」

「霊源点をつぶされた…。霊力を使えなくなって、なすすべもなくやられたんだね…。
 だからこんなにきれいな顔してるんだ……」

「飯田さん…どうしますか…?」

「隊長には伝えるよ。隠密に頼んどく…。
 それと警戒レベルもあげてもらう。」

「わかりました。」

「それからね、これはまだ未確認なんだけど…侵入者がいるらしいの。」

「侵入者…?まさか麻琴は―――。門番はなにを―――。」

「そう興奮しないで。こっちはまだなにもわかっていないの。こんなこと…はじめてだから…。
 小川のことで自分を見失ってしまったら…次にああなるのは石川かもしれないわよ。」

「は、はい……」

「それじゃ、いくね?」



飯田が立ち去った後も、暗い表情のまま、石川は小川の亡骸を見つめていた。
過去に戦争を体験していたが、身近な者の死というのは初めてだった。
しかし不思議と涙はでなかった。それは、まだ見えざる敵に対する憎しみのせいかもしれない。
いままで戦うということに抵抗があった。自分の仕事は傷ついたひとを癒すことだと言い聞かせ、
ある意味逃げてきた。だが、彼女はいまこぶしを握りしめ、武器をとる決意をしたのであった。


――――天中街東部

AM0:24

「―――――伝達事項は以上です。」
シュっ

隠密隊員は伝達事項のみを簡潔に言うと、夜の闇に消えていった。
ショックのあまり新垣はその場に立ち尽くしている。

「そ…んな…まこっちゃんが……?さっきわかれたばかりなのに…」

と、何者かの足音がこっちに近づいてくる。
―――タッタッタッタ

「だ、誰!?」

「新垣か…?」

「な、中澤さん?そ、そんな…どうして中澤さんが…処刑されたはずじゃ……
 それに、保田さんに平家さん…
 まさか…侵入者って……?」

「わたしたちのことでしょうね。」

「じゃあ…まこっちゃんもあなたたちが!?」

「小川?いや、しらんなぁ。」

「とぼけないでください!!まこっちゃんの仇……『霧笛』!!」

新垣の怒りとは裏腹に、穏やかな笛の音が鳴り響く。
霊帯刀『霧笛』は笛の音に霊子を帯びさせて、まわりにいるものの
自由を奪う。いつもならばそれで新垣の役目はおわり。パートナーが
止めを刺してきた。しかしいまは一人。はじめて人に刃を向けた。


「やああああああ!!」

「圭坊!みっちゃん!」

「えっ!?どうして―――?」

平家はすんでのところで新垣の攻撃をかわし、保田が新垣の腕をとり背後にまわる。
動けないはずの2人が動いた。霧笛が効かない。
新垣は完全に身体を封じられた。


「さすがはねぇさんの『無音』やね。」

「わるいな、新垣。うちの霊帯刀は他の霊帯刀の効果をかき消す。
 霊帯刀が普通に武器やったら気付いたのにな。あんたの霊帯刀が音という
 特殊なもんやっただけに気付かれへんかった。」

「そ、そんな…」

「あんたらみたいな子どもが戦うことはない。いま、楽にしたる――――」






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