第2話


「え〜と、じゃあ、まず搭乗MSの割り振りやな。」
自分達のMSを前にして、割り振り表を見ながら中澤が全員に言う。
「うち、なっち、圭織、圭坊、矢口、後藤はRGM-79G・GMコマンドやな。」
「はい!」
名前を呼ばれたメンバーはそれぞれのMSに向かう。

「吉澤、辻、加護はRGM-79・GMやな。」
彼女達も自分のMSに向かった。

「あれ?あたしは・・・?」 「ん・・・。石川か・・、あんたはな・・・。これや。」
中澤は端っこにあるMSを指差した。
「ええええ〜〜!!」
そこにあったのはGMはGMでもすこし違うGMだった。

RGM-79D・・・通称:寒冷地用GM。
「なんであたしだけ・・?」
「わからん・・。何でやろ?」
しぶしぶ石川は自分のMSに向かって行った。

全員がMSに乗り込んだのを確認した中澤も
自分のGMコマンドに乗り込むと、無線をONにして全員に話し掛けた。
「みんな〜。OKか〜?」
「大丈夫だよ〜。」
「OKです〜。」
「大丈夫です・・・・。」
全員が返事をした。
最後に不安そうな返事をしたのは石川のようだったが・・。

「それじゃあ、全員ライフルを持ってや。実弾じゃなくて訓練用ペイント弾な〜。」
「了解〜!」

こうしてMSデッキから全員のMSが発進する。

ジャブロー基地の端にあるMS訓練場。
ここで今日は完熟訓練を兼ねて対戦訓練をすることとなった。
一通りの動作訓練を行うと、いよいよ対戦訓練。

Aチームは中澤・矢口・後藤・石川・辻
Bチームは飯田・安倍・保田・吉澤・加護

両チームには実践未経験者が二人づつ入る。
1000メートルほど離れてから訓練を開始した。

さすがに中澤を始め、実戦経験が豊富な6人の動きは俊敏だった。
一方の実戦経験未経験者の動きは遅すぎた。

ジャブロー地下空洞の柱に隠れていた中澤の目の前に不用意に加護が現れる。
「もらったで〜!」
中澤のマシンガンが咆哮を上げると
加護のGMにペイント弾が着弾する。
「ありゃ〜・・。やられちゃいました・・・。」
『おいおい・・。ゲームやないんやで・・。』


一方飯田も石川を照準に捕らえていた。
「もらったよ!」
石川の寒冷地用GMにペイント弾が炸裂する。
「ああああ〜〜!やられちゃいましたぁ〜〜!!」
『おいおい・・。シールド使いなよ・・。』

対戦訓練は実戦未経験者がアッサリとやられた以外は順調に進んだ。
さすがに経験者達の動きは素早い。
中澤が安倍を撃つと、安倍はシールドでカバーし
すぐさま反撃する。
中澤もそれを予期して素早くよける。
俊敏な動きをすればするほど、強烈なGがかかり、
シートベルトが容赦なく彼女達を締め付ける。
後藤も中澤たちに比べると実戦経験は多くないが
それでもよく健闘していた。

「みんなうまいね・・・。」
あっさりやられた新メンバー達は、
訓練場の外で戦いを見守っていた。
「自信なくなっちゃったよ・・・。」
「そうれすね・・・。」

こうして訓練は決着が着かないまま終了することとなった。
MSデッキに戻ってきたメンバーは
自分達のMSの整備を整備員に頼むと、訓練の総括をするために
ブリーフィングルームに向かった。

「え〜と、それじゃあ今日の訓練の総括をします。」
中澤の音頭により反省会が始まった。

「まず!加護!あっさり前に出すぎやで!」
「はい・・。すんません・・。」
「ゲームやないんやで。実戦だったら戦死やったんよ。」
「はい・・。」

「次、辻。あんたももっと警戒せんと。」
「はい・・。わかったのれす・・。」

「それから石川!あんた何のためにシールド持ってるん!?」
「・・・。」
「わかっとるんかい?!」
「はい・・。」

「次、吉澤。動きが鈍すぎやで!」
「・・・。」
「わかっとるん?」
「はい・・。」

「それ以外は、おおむね良し。気づいた点は・・・。」
こうして中澤は、それぞれのメンバーの反省すべき点を伝えた。

「それから、いくら対戦訓練をしても上手くならへん。」
「?」
中澤の言葉に不思議そうな顔をするメンバー。

「1対1で教育しようと思うんやけど。どやろ?」
「いいんじゃない?」
「なっちもいいと思うよ。」
「よっしゃ!決まりや。」

「じゃあ圭織!辻を教育したってや。あんた感がええからな。」
「は〜い。」

「次、圭坊。あんたは石川を訓練したってや。」
「了解。」

「矢口。矢口は吉澤を頼むで。すばしっこさを教えたってや。」
「はい。」

「後藤。あんたは加護を頼むで。」
「うん・・。」

「よし!決まり!そんじゃ解散!
それぞれ教育係は受け持ちのメンバーと打ち合わせしといてや。」

「あれ?裕ちゃんは?」
「うちはリーダーやから♪」
「ずる〜い・・・。」
「うるさい!解散!」
そう言うと中澤はブリーフィングルームから出て行った。
その後を安倍が追う。

「裕ちゃ〜ん!」
安倍が中澤を呼んだ。
彼女達は作戦中以外、大抵あだ名で呼び合っている。
「なんや?」
「損な役廻りしてるね〜。相変わらず。」
「誰かが憎まれ役やらんとね。せっかく一緒になったんや。
もう誰も死んで欲しくないんや・・・。」

かつてルウム戦役で福田が戦死した時、中澤は立ち直れないほどのショックを受けた。
決して中澤に責任があったわけではない。
福田が前に出すぎていた。
中澤たちも必死に支援しようとした。
しかし福田は戦死。
市井も重傷を負った。

「そうだね・・・。なっちも頑張るよ。」
「頼むで。」
「うん!なっち、そんな裕ちゃんが好きだよ!」
「あんがと。うちも好きやで。」
そう言うと、中澤は安倍の頬に軽くキスをした。
「なんだよ・・・照れるべさ・・。」
中澤は顔を赤くする安倍の頭をくしゃくしゃなでると、
手を振って自分の部屋に帰っていった。

「ふぅ〜・・。疲れたな・・。」
中澤は自分の部屋の扉にあるボタンを押した。
ピッと音がすると、ドアが開く。

中澤が部屋に入ると自動的に扉が閉まった。
それを確認すると、中澤はノーマルスーツのジッパーに手を掛けた。。
「別に地上やからノーマルスーツ着る必要ないんやけどね・・。」
誰に話し掛けるでもなく、独り言を言いながらジッパーを下ろす。
すっかり汗だくになっていた。
下着も脱いだ中澤はシャワールームに入る。

頭から熱いお湯を浴びる。
「はぁ〜・・。」
中澤は自分の肌を見ながらため息をついた。
「何やってんやろうね・・。うち・・。」
中澤の年齢はもうすぐ30になろうとしている。
にもかかわらず独身。
相手もいない。
「はぁ〜。彩っぺがうらやましいね。」
MSのシートベルトで出来た両肩の痣を撫でながら
中澤は呟いた。

そのころブリーフィングルームでは1対1の「反省会」が終わっていた。
各教育係りが解散した部屋の中で愚痴をこぼしていた。
「はぁ〜・・。こんな中隊入るんじゃ無かったよ・・。」
最初に口を開いたのは吉澤だった。
「教育部隊にいた時は優秀って言われたのに・・。ショックだよ・・。」
「そうれすね・・。ののも自分で希望して入ったのに・・・。」
辻が吉澤に同意する。
「やっぱりこの中隊は普通じゃないですよ。メンバーが。」
同じく石川も自信を喪失しているようだった。
「殴られないだけマシかな・・。」
「こうなったら見返してやろうよ!
あたし達だって仮にも『優秀』って言われてたんだもん!」
負けん気の強い吉澤が声を張り上げた。
「そうだね・・。でもね・・。」
石川は相変わらず自身が無さそうだ。
「がんばるのれす!!」
「そうだよ!」
ちびっこ二人組みも見かけによらず気が強い。
こうして彼女達は他のメンバーを見返すために努力することを誓った。





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