第1章・第3話


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「圭織・・・・?圭織・・、圭織!!」

「ん!?!」

飯田は自分の名前を呼びつづけている声によって我に返った。

「あれ?」

周りを見渡して自分がコクピットの中に居ることに気づく。
GMVのコクピットに居ることに。
そして自分が出撃までの僅かばかりの時間に夢を見ていたということも。

「どうしたの?また交信してたの?」

懐かしいような声。
いまだに訛が抜けていない。
そんな声を聞くとつい安心してしまう声。
常に自分が共に同じ道を歩んできた
腐れ縁と言ってもいいような、それでいて信頼している友人の声。

「まったく!なっちはいつもカオリのことを馬鹿にして!」

「バカになんかしてないべさ!!」

「・・・・」

「あれ?圭織?どうしたべさ?」

突然黙り込んでしまった飯田に対して
少しばかり安倍は動揺する。

「なんでもない・・。ちょっと思い出してた・・」

安倍のコクピットのモニターに写る飯田の目には
何か光る物があったように安倍には感じられた。

「もしかして・・?」

「うん・・、ちょっと思い出してた、辻の事・・」

「そっか・・」

「なっちもちょっと裕ちゃんの事思い出しちゃうべさ・・」

「そうだね・・・。もう人が死ぬなんて嫌だね。」

「うん・・。でも今回は人を助けるのが仕事だしね!!頑張るべさ!!」

戦いを前にして辛気臭くなってしまっている飯田を元気付ける為なのか
安倍が明るい口調で言った。

「うん・・。カオリ頑張る!」



「全MS部隊発進!!!」

彼女達はアウドムラ内部に響き渡る突然の放送で我に帰る。

「さあ!圭織!行くべさ!!」

「うん!なっちもね!!」

「おう!」

飯田が操縦桿を操りつつ、ペダルを一気に踏み込んだ。
ドダイ改のエンジン部分が明るい閃光を放って
彼女の機体に強力な推力を与える。

「飯田圭織、RGM-86R GMV行きます!!」

彼女の機体は一気にアウドムラの射出口から空中に飛び出した。


『辻・・。待ってね。カオリもすぐに行くからね。
 その時には、ちゃんと謝ることが出来ると思う・・・』


飯田圭織と安倍なつみ。
これが生涯最後の出撃となる。





第1章 完





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